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「月光カステラ製造所」も「鬼語放送局」も賢治作品ではありません [宮沢賢治]

少し前から「あらためて記事にしますね」と書いていた
小学6年生の教科書にでてくる
宮沢賢治の「やまなし」と「イーハトーブの夢」のことです。

まずは私のことですが
ここ数年、小学校6年生のみなさんに宮沢賢治の作品紹介と、
賢治のふるさと岩手の紹介をする機会をいただいています。
訪問させていただいている小学校では、
光村図書の国語の教科書を使っていて
その中に賢治作品「やまなし」と、
賢治の紹介テキストとして畑山博さんの「イーハトーブの夢」というエッセイがでています。
5.jpg
教科書をもっていないので・・・学校でコピーをしてもらったものを使っています。なので写真も・・・すみません。

私は6年生のみなさんがこのページを学ぶ時期に合わせて、
賢治さんの授業を・・・ということで訪問させてもらっています。
毎年生徒さんとおはなししたり、一緒に考えたりできる機会は
楽しくて、感謝。

どんなふうなことをしているかは
 こちらからご覧ください 
  →http://bonjour-konogoro.blog.so-net.ne.jp/2015-12-25

さて、その中でいつもでてくる質問が2つ。

★その1:
「やまなし」を読んで・・・「クランボンってなんですか」

 ・・・これはね、もう本当の答えは、賢治さんにたずねないとわかりませんよね。
   
    だけど、あなたはクランボンはなんだと思いますか?
   
    それを想像するのってたのしいでしょ!?
    それが一つの答えではないかと私などは思うのです。
    
    それでもやっぱり答えがほしいなら
    宮沢賢治を研究している人がたくさんいるので、書店や図書館やインターネットで
    いろんな説があるんだなあということを、まずは自分で調べてみてください。
    へえそうなんだ、と気づくことからやってみるのも楽しいですよ。
    
    そうして、もう一度自分はこれが答えじゃないかなあと想像してみてください。
    
   小学校で、それもたぶん賢治作品と初めて触れる「入門」の段階では、
   クランボンに「正しい答え」を求めるのではなくて 
   この言葉に触れてどう感じるのか、
   自分で考えたり、想像してみることが大切で、
   それが「クランボン」の答えではないかなと思うんです。
   
   「クランボン」をはじめ、
   賢治作品からは、なんだかわからないことばがたくさん飛び出してきます。
   なんかよくわからなくて、ヘン。
   ヘンだけど、その響きやリズムを「感じてみる」と、なんか楽しいでしょ。
   

★その2:
「イーハトーブの夢」を読んで・・・
 「月光カステラ製造所」や「鬼語放送局」は、どの賢治作品にでてくるのですか。

賢治作品を読んで探してもみつからないし
教科書に載っている地図と作品の関係ってなんだろうかとを見比べてもわからない
これらが登場する賢治作品が読みたいので教えてください、と
読書が好きな生徒さんからよく出る質問です。

  ・・・残念ながらこれらは、宮沢賢治作品に登場することばではないのです。
    だからどの作品を読んでも、出会う事はできません。
    なぜならこれらは筆者の畑山さんがつくった「賢治風な」言葉と世界だからです。

「イーハトーブの夢」は、宮沢賢治のことを伝えるとともに、
筆者の意見や感覚も織り交ぜられた文章です。
だからこの文章は、賢治の伝記ではなくて「エッセイ」という分類の入るのだろうと思います。
ここが大事なんです。

本文の前半部分と後半部分は、
賢治の幼少時代、中学、高校時代、高校教師時代から晩年までのことが、「三陸大津波」「石こ賢さん」「農という文字」「教え子たちとの話題」「羅須地人協会」などのエピソードとともに淡々と事実を語る形で記されています。
「宮沢賢治入門」レベルで、賢治という人を知るためにはコンパクトにまとまっていてわかりやすいです。

しかし、中盤部分のところに記されている、
賢治の創作活動について、賢治がもっていた夢や理想について、
そしてその文章の途中に挿入されている「筆者が作ったイーハトーブの地図」のところ。
ここは賢治が紡いだ作品世界に対しての、「筆者自身の」想いです。

つまり「イーハトーブの夢」は伝記的要素と、筆者の気持ちの入ったエッセイ部分が混在している
ということを意識して読み進めないと、すべてが賢治作品であるかのような勘違いが起こります。

例えば、
本文では「北守将軍と三人の医者」について語られたあとの行から、
6.jpg

・・・以下、教科書から引用です・・・。

そんな数々の物語の舞台を地図上にまとめてみると、
楽しいイーハトーブの地図ができあがる。
  豊かに農作物を実らせる川沿いの平野。 
  月の光を集めて作るカステラの製造工場
  青空を作る山
  鬼語で放送をする放送局
  銀河のエネルギーを集めて発電する発電所
  グスコーブドリが爆発させた山
  「やまなし」のかにたちがすんでいた、イサドの町近くの小さな川
  そして、賢治の作品でわすれてはならない「銀河鉄道の夜」がある。
  ある晩、事故で亡くなった親友を送って、天上の国まで旅してしまう少年の物語。目をみはるほど美しい天井の風景を出てくる。これは、大切な妹トシをなくした賢治が、悲しみのどん底で書いた作品だ。物語の主人公、ジョバンニが住んでいた町は、イーハトーヴのパノラマ地図の種山付近と考えられる。


同じページにある筆者が作ったイーハトーヴの地図
7.jpg
以上は、地図も含めて筆者が語っている部分です。
宮沢賢治が記したものではありません。
岩手県の地図とリンクして賢治世界が描かれているようですが、
これも賢治があてはめたわけではなく、あくまで筆者が示す「一説」です。

だから宮沢賢治作品には
  月光カステラ製造所も鬼語放送局も登場しません。
  種山ヶ原に銀河鉄道の駅があるというおはなしはありません。
  爆発している火山も、実際に岩手の沿岸部にあるわけではありません。

賢治研究家で芥川賞作家でもある畑山さんの紡がれる言葉には、
魅力あふれ、言葉に力があるので、
賢治ファンには素敵だなあと、「賢治風な」その雰囲気も受け入れられる。
そして賢治のことばとシンクロして、
だから賢治作品っていいんだよね、と私自身も共感し、大好きな部分です。

しかし、そんな部分だからこそ
宮沢賢治と初めて出会う人~入門の人には、
=(イコール)賢治作品、賢治の世界と勘違いしてしまいます。

私が、上記の質問に対して「違うんです」と伝えると、がっかりされる生徒さんもいます。
それで私もがっかりします。

小学校の先生方からも時々ですが
「これって賢治作品ではなかったのですか」と言う声があがります。
エッセイと伝記が混ざっていることを理解して下さい・・・。

少々言葉が悪くて恐縮ですが
宮沢賢治「入門」の小学校のみなさんや、
賢治作品にはじめて出会う人たちに混乱を招く「イーハトーブの夢」の解釈には
賢治ファンとして大変気になっているところです。

あくまで賢治ファンである私の個人的な意見ですが、
あらゆることばやお話の世界と出会う
そして宮沢賢治作品の視点ではおそらく「賢治入門」の時期である
小学6年生の賢治に関するこの2作品。
おそらく生徒のみなさんの中には
人生初めて触れる賢治作品が「やまなし」のはず。
そして中学、高校でも国語の教科書にも取り上げれられている宮沢賢治作品です。
これからもどこかで、宮沢賢治の作品と出会うでしょう。

そんな小学校での「やまなし」そして「イーハトーブの夢」に対しては
筆者はこうして想像して、楽しんでいるんだ、
だったら、私なら、僕なら、賢治作品を読んで
こんな世界を想像したよ、こんな言葉作ってみたよ。
想像することの楽しさや、賢治作品(そして文学作品全体を)を楽しむきっかけになる
そんな出会いになって欲しいと願っています。

ぜひ「わからないなあ~」ということで賢治作品を遠ざけないで、
むしろ不思議なことや、ヘンだなあと感じることを大切にしてください。
そしてそうして思ったり考えたりした部分で
賢治作品を、そして賢治作品に限らずことばが紡ぐ物語世界を
「楽しく読む」「わくわく出会う」きっかけに。

ちょっと偉そうなことも書きましたが、このへんで。


コメント(2) 

コメント 2

なおたろう

自分で考えて感じるということが大切ですね。
すぐに答えを知りたくなる気持ちを抑えて、考えてみる。
大人にとっても当てはまる・・・・
by なおたろう (2016-01-02 22:15) 

ゆきねこ

なおたろうさま 
こちらにもコメントいただいており、ありがとうございます!
確かに大人にもあてはまること、最近は特に多いかもしれませんね。
宮沢賢治の作品は想像力を使って楽しめるところがたくさんあると思っています。そんな魅力や楽しみ方を小学生のみなさんにもお伝えできるといいなあと思っています。なおたろうさんもこれからも楽しく読み進めていってみてくださいね。

by ゆきねこ (2016-01-27 17:51) 

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